食菜録

下巻103

尾州味噌摺り流し

原文
一、松魚〔鰹〕節煮出しを取り候て、よくよく冷まし置きその露にて味噌をすり煮立て、なお又た冷まし置き、魚の肉を右汁にて段々摺り流しその上にて又た煮出ち候まで搔き廻し候事(但し最初よりよくよく搔き廻し候わねば焦げ付き申し候事)。
 一人前に尾州味噌七十匁[もんめ]〔約260g程度〕程、鮎、並尺くらいの品二本入れ(但し 石臼にて搗[つ]き蒲鉾濾にてよくよく越す事)
一、魚肉いらず、尾州味噌御仕上げの節は煮立て候、節〔の〕泡をよくよくり取り候事。
右は、中務大輔様〔松平義和か?〕御出で、茶の節御持成されたる候、尾州味噌摺り流し出来風味殊の外よろしき候処、この御味噌は江戸表にて為御製に相成り御味噌にて、 本渡り尾州の味噌にはござ無く、 江戸表にて為御製に相成り候味噌にて尾州様御上りに相成り候よし。本渡尾州味噌にては、渋き御座候由。中務大輔様御直[じき]話にござ候事。
(但し御汁の仕立方は前に認め候通りにござ候。)

[主な食材]

鰹、味噌
葱、木の芽

備考:「鰹の煮だし汁を冷まし、味噌を摺入れて煮、
また冷まし、魚の肉の摺ったものを段々に入れる。」とある。
「普通の大きさの鮎を石うすでひいて汁に入れる」とあるので、上の「魚の用」とは鮎の魚肉のことか。
「蒲鉾濾」とは何か不明。「彰住考来」(茨城県観光協会、2000年)59頁では、浦ごしのための道具と推定している。
「尾州みそ」がどのような味噌であるかも不明。