原文 うるの中白米 一斗 水 一斗(この水にて右の米を蒸し、飯に仕り候。堅めなる飯になるなり) 右の食を人肌(体温)に冷まし、八月中旬に仕込み申し候、又た九月時分に候わば、人肌よりあつき加減によし。 水 二斗三升、麹 七升 甕[かめ]に成りとも桶になりとも、仕込み申し候。右七升の麹の内を、壺底へ少し仕込み、 その上へ飯を一返も幾へんも段々に、麹と飯と置き如何にも堅く押付け、糀を一升程残し、一の上に置き、その後鍋蓋のようになる物を置き、 食の動かぬように水を入れ申し候、甕の口広きがよく候、紙にて一重蓋をして、その上に雨の入らぬように覆いを仕り候、三日目に上の覆いを取り、 紙蓋に小刀にて幾つも穴を開け息を出し申し候。夜は覆いを仕り、朝は覆いを取り晩まで、日に当て申し候、 三七日〔二十一日〕の間、かくの如く仕り候、その内に雨降り候わば、上に桟木[さんぎ]を渡し板蓋をして雨の入らぬように仕り、 酢の息を出し申し候。酢の蓋三七日[みなのか]〔二十一日〕にて沈み候えば、酢は何日なりとも、右の如くにして外に置き申し候、 虫等入り候わば、細々取り申し候。一、三七日〔二十一日〕過ぎ紙蓋の中を五寸程切り抜きて置くなり。 一、蓋よく沈み候時内へ取り入れ、十日程過ぎて開くるなり。一、あけ酢樽へ入れ年を越させて遣いたるがよく候。 取掛候樽は悪くなりたがる故、当座遣い申し候わば別にいたし候てよし。夏になり候ては火を入れてよし、煮加減は酒同前なり。
備考:善徳寺は、駿河か。