原文 一、大豆 一升、塩 四合、糀 六合、大豆を常法煎て突き、土瓶の大さに丸め、藁を此の如く敷き、その上へ乗せ包み、 台所の梁[はり]につるし置き黴[かび]るまで置き、小口切りに切りしを、塩、糀、突きまぜ桶へ入れ置き、 勝手成る者は一年位置きて用ゆなり。(但し右は上方手代杯へ出し候分、手前遣いは、塩四合、糀四合) 又法 一、御領内入郷筋にて出來候、玉味噌製法の儀、常の味噌の如く豆を煮て搗き候て、その豆一升位ずつ丸め玉にいたし候を、 そのまま藁[わら]等にて縛[ゆわ]い日数四、五十日つるし置き、その後、塵を温湯にて洗い落し乾し置き、細かき割のまま糀を、 堅作り甘酒にいたし置き候を入れ、搗き交ぜ拵え候趣、尤も豆一升へは糀三合、塩四合位の分量に拵え候趣に候えども、 糀四合入れ候得えば尚以て宜しき趣、製する時節は十月より二月頃まで宜しき、夏を越し申さず候ては風味出で申さず趣に御座候。 右玉味噌製法の儀承けさせ候処[ところ]前書の通りにござ候。 四月 東御郡方 玉味噌製法 一、大豆 一斗積り、 塩 五升 右煮方、常の味噌の通りよく舂き、茶碗位の大さに丸め、板の上へ並べ、五日程過ぎて堅く成り候を二つ縄に結び、 竈[かまど]の上などへ火気の上へつるし、四五カ月指し置き、殕〔腐〕を去り細かく刻み、 樽へ春込み四五カ月過ぎ候て用い申し候由に御座候。 同 河津楠内拵下 一、大豆を常の如く煮、搗き候て一升位の分量玉にいたし、家の内へ吊し、日数二十日も過ぎ、湯にて洗い刻み、 塩五合、糀五合の割に入れ搗き混ぜ一ケ年も置き候て用い候えば、極上品に出来候由。
「原典現代語訳日本料理秘伝集成」第一巻(同朋舎,1985年) P.113