下巻141
奥州守山糒製法(寒中製すべし)
原文
一、 糒[ほしい]、仕立上白 一石蒸し(但し、乾欠 一斗五升減、正在 八斗五升位)
右欠米[かけまい]大数試み置き候所に御座候、糒[ほしいい]上りよろしくば米生[なま]により度るごとに甲乙御座候。
米の儀前日磨ぎ候、数度掛け水仕り濁[にごり]よく抜き、附桶へ入れ、(この桶は下に水抜きの穴あり。)一夜指置き一両度も水入れ替え
濁りを抜きて翌日一斗入れ位の蒸籠へ、三つ重ねて蒸し候方よろしく候。桶こしきにて蒸し候ては桶肌付きて相い成り候処、
柔かに相い成り候てよろしからず候、蒸籠念入れよく蒸し筵[むしろ]へ取り薄く仕り候て、
息を抜き度々返し手入れいたし、その後中干[ちゅうぼし]
に相成り候砌[みぎり]、板揉みと申し候て、幅一尺、長さ三尺位の板を敷きてその上へ飯を載せ、六七寸位の小さき板にてよく揉み候えば、
一粒ずつに相成り申し候、その後よく干し上げ、唐箕[とうふ]に掛け筵塵[むしろほこり]等を取り、桝目相改め申し候。
一、粳[うるち]米は蒸し候ても、糯[もち]米より欠米が粳米相立申さず候ように相い考へ申し候、粳糒、しかと試み仕らず候、
さりながら糯米より粳米の方干上りよろしくこれあるべき候と存じ奉り候、尤も粳糯仕法、前書の通り蒸籠にて念入りに蒸し、
右飯、莚[むしろ]へ取り一通り、
息を抜き手揉[ても]みと申し候て、熱き内揉み候得ば、早速に一粒ずつに相成り申し候、よく干上げ申し候、
右糯糒と違い製方面倒に御座無く候、右を御貯に極められ候には、叺[かます]へ詰め置き翌春入梅前、御手入れ日干しに極められ候得ば湿請〔受〕け申さず候、
右成は二、三年御手遊ばされ候えば丈夫に之有り候、日干仕り候節一通り日息を抜き、入れ物へ御詰め遊ばさるべき候。
(但し、右糒[ほしいい]菓子種製法、仕立挽臼[ひきうす]加減、なおまた御鹿訳ヶ仕法の儀は甚だ面倒にこれあり候、
巨細の儀は紙の上にては申しかね候えども大意のみ右の通りに御座候。)
一、糒石臼にて挽き候て、荒[あら]き所をすぐり取り、又々石臼へ掛け申し候、右最初篩へ留り候を伊羅と相い唱え申し候、伊羅、篩[ふるい]
より降り候を上伊羅と唱え、その次を荒と唱え、それよりだんだん篩[ふる]い候て仙台真引、細真引微塵と七段に相い分け申し候、
右訳[わ]け方は荒き篩より追々細の篩[ふるい]に移し仕上げ申し候、右の通りにござ候。