原文 酒は世上〔世間〕にて水よりても善くも、悪しくも出来ると雖[いえど]も、水は二の次なり、米を吟味するなり、米の宜しき品第一なり、 水戸にては小沢郷〔現常陸太田市内〕の米、他領にては小田〔現つくば市、土浦藩領〕辺りの米をよしとす、左様の性合よき米をよしとす、 左様の整合よき米を念入れて春き、又よく念を入れて磨ぎて造る時は、上方の酒にても水戸の酒にても相違は之れ無く候なり、上方は酒の直〔値〕 よければ念を入て造るなり、常州〔常陸国〕辺りは酒の直〔値〕よろしからずは米を撰ばずして、造り方も手間省く故酒宜しからずというは尤[もっと]もなり 、案ずるに、伊丹〔兵庫県南東部の地域〕にて酒を造る水の目方を以て、右同様の水にて上米にて念入れ造るときは必ず同じからん。 (但し、ホクトメートル〔液体の比重を計るための浮き秤〕などにても水の目方は知れるなれども、それまでもなく茶碗へ入れても分るべし)
備考:食菜録特有か?