食菜録

下巻16

葡萄酒の方

原文
一、よく熟したる葡萄一粒ずつにして、押し潰し、汁をく搾り溜め、鑵鍋[かんなべ]へ入れ、炭火の上にて、一泡[ひとあわ]煎じその後よく冷し、 冷え候時焼酎にても、泡盛にても三分加え申し候。
一、龍眼肉〔喬木の実の果肉〕、上の皮を焼酎へひたひたに漬け、二七日〔十四日〕も置き候えば、 醬油の如く出で申し候、その時龍眼肉を取上げ、布にて、漆漉す如くに搾り候て粕[かす]を捨て、 右葡萄の汁を混ぜて焼酎と龍眼肉の焼酎と二色を心次第に混ぜ申し候、糂粏[じんだ]〔下巻7 ぬかみそ〕の如く成り申し候。 (著者注 じんだは一種の食品、麹と塩とを糠に加えてならしたるもの、酢又は酒を加えて食す)

備考:合類巻一では「葡萄酒」。本文の表現に若干の違いあり。