原文 上白米の餅 五斗 上白の糯[うる]米 五斗 この二色別々の桶に入れ、寒の中に二返[へん]水にて洗い、 初めの一返の水を捨て、二返目の水をそのまま七日置き、八日目に常の如く蒸し食にするなり、但し餅米と糯米と甑[こしき]二つにて、 めんめんに蒸し、同じ蒸し加減にするなり。 上白糀 六斗、水 六斗 右麹を水とよくあわせ、さて二色の蒸し食、 人肌に冷め候時半切に入れ、よく揉み合わせ、一夜置き明日臼にて搗[つ]き申し候、搗き加減はこの蒸し食の半分過ぎ潰れ申し候程に搗き申し候。 七日の内一日に二度三度は手にて揉み合わせ、上下かきまわし温かなる所に置き申し候、さて八日目に壺に入れ、 板にて蓋をよくよくして、その上をかき、紙にてよく包み湿気の入らぬようにして土に埋め候、 これも来年の六月土用の内に口を開け候、豊後[ぶんご]〔現在の大分県〕のよりは甘く候、色白き濁り酒なり。
備考:合類巻一では「肥後の麻地酒」。本文の表現に若干の違いあり。