原文 餅米 一升、糀 三合、右二味まず糀を水にて洗い上げ粉を去り、水気を滴し尽くし、餅米を常通の飯の如く炊き、 別器に移し冷[さま]して後二味を器に納れ混和し、甘味の中少しく酸味生ずるを度とす 、尤も朝蒸餅[パン]の母[もと]を製せんと欲するときは、前夕に甘酒を製するなり。冬日は早く製りし、火辺に置き少し暖気を得るを好しとす。 夏は二更頃(夜九時から十一時)に製す、極暑の節は昼後用ゆるを忌む、 (甘酒酸味過ぎればなり、)故に昼後用るには、早朝製し、太陽に照し、器物熱するときには、昼後に至って漸く適度の源醅〔酵母〕[げんばい] と成るなり。 初発、新たに製[つく]る時は、別に甘醅〔酒種〕を求め、(但し饅頭[まんじゅう]屋にて求むるなり)混ずる時は、上好の甘醅と成るなり、 その後は少しずつ残し置きこれを源醅とし次第に加え用ゆべし。米一升に醅[ばい/もろみ]、およそ二合ほど納[い]れるなり。 (石島注:源醅とは発酵原〔酵母菌〕をいう。)
備考:『料理物語』『料理早指南』など多数に製法の記述がある。