原文 水三合程の中へ、葛を盃に半分程入れよくとき鍋へ入れ弱き火の上に掛け、箸にてそろそろとふりたて一泡[ひとあわ]煮申し候得ば、 葛色光[ひか]り粘り出来申し候、その時開[あ]け人肌に冷まし、それをもこねしる〔?〕に出し葛を捏ね申し候、 捏ね加減のしるさ〔?〕は手の中に捏ね申し候、葛を一盃入れ下へ流し見申し候に、素麺の如くよくすすぎ落し申し候時、 柄杓[ひしゃく]の底に穴を五分廻り程に丸く穴をあけ、その中へ右の捏ね申し候葛を入れ鍋に湯をよくたたせその中へおとし申し候、 鍋の下を油断無く焚き申し候、湯ぬるくなり候えば素麺切れ申し候、鍋の中に素麺たまり候わば、せんくり〔先繰り、順々に〕 に取上げそのまま水へ入れ申し候。
備考:合類巻二では「葛素麺」。本文の表現に若干の違いあり。食菜録下巻51に同名。