原文 大麦 一斗(成程〔可能な限り〕,よくつき、皮の白きように搗き申し候、一夜水に漬け蒸し申し候) 大豆 三升(炒りて引〔挽〕きわり、皮をとりて蒸し申し候)右二色一つにして醤油の如く寝させ、二十四時過ぎて又た打ち返し、 五日程ねさせ候て取りい出し、揉み砕き、かみに入れて一日よく天気に干し申し候。さて、ひしおに入れ申し候時、よくよくあたたまりを冷まし、 冷え候時、しこみ申し候水一升に塩二升二合入れ、水の中にて塩をよく揉み砕き候えて、鍋に入れよく煮やし、桶へあけ、 よく冷まし置きて、冷え候時、仕込み申し候。一日一夜にては、冷え申し候ほどに、冷めかね申し候ものにて候、 二日二夜も置き候て、右の寝申し候糀を入れ日に干して、天気悪しく候わば、二日三日は相待ち候てなりとも、 なるほどよき天気にしこみ申し候、同じくはそのまま日に干し申し候わねば、悪しくござ候。 一日に一度ずつ手にて上下へ攪き回し候、幾日も一度宛、手に手上下へ攪き廻し、干し申し候、 雨少しにても入り候得ば悪しく候。よくいでき候わば、壺いくつにも入れ置き、用次第口をあけ遣し申し候、 壺の口如何にもよくはり、風のひかぬように仕り候、とかく仕込み候日に半日なりとも日に当て申さず候えば不出来にござ候、 昼は日に干し夜は取り入れ申し候、日の強き時は五日にても出来申し候、兎角再々給し候て見申し候、糀の匂い、のき申し候えばよく候。
備考:合類巻一では「醤の方」。本文の表現に若干違いあり。食菜録下巻54に同名あり。