下巻96
こはく饅頭の法
原文
一、中三盆砂糖 二百五十目、水三合入れ煮立ちたる所を下し、灰汁[あく]を寄せ取り、又た煮立ちたる処を下し、
灰汁を寄せ取る、かくの如く三四度し、灰汁寄せかね候位少くなり候節、煮立ち下し少々の灰汁中へ搔き寄せ、
その処へ玉子二つの白味を入れ、又た一寸火に掛け玉子堅まり候節、右にて寄せたる灰汁も玉子と一同にすくい上げる。
一、外に寒天二本、水四合にてよくとき置き、右を前文の砂糖水と一同にして濾[こ]し、又煮たて緩き水飴の如くなるまで火に掛け、
焦げぬように搔き回し飴の如く成りたる時、小猪口へ匙[さじ]にて七分目ばかり入れ、右の中へ団子に拵[こしら]え置きたる餡を入れ、
又少々前文の如く飴に成りたる品を入れ猪口のまま水へつけ堅まりたる所を抜くなり。
(但し 琥珀やわらかくするには寒天少なく、
堅くするには寒天多く入れるまでなり。)
白砂糖、白寒天なれば白く、黄の寒天なれば黄に、紅なれば紅に出来る。砂糖の白からざれば琥珀の如し。
又法 琥珀饅頭(一名金玉饅頭とも云う)
一、唐三盆砂糖 二百五十匁、水に煎じ上げ、右の水煮詰め、但し箸にて回し糸の引ようになるまで、
右の所へ寒天一本、水五合程冷やし、その水共煮溶し、水の中へ濾[こ]し込み、尚お又た煮詰めやはり右の如く糸引く程にてよろしき、(図略す)図の如く、
猪口を多く入れる時は、水、湯に成る故に栓を抜き度々水を替える。
図の如く型の中へ水をつぎ、少々堅く成り候所へ
餡を丸め入れその上へ又た口まで注ぎ込むなり。「みつ」とは煮詰り密の如くなるをいう。
中三盆砂糖二百五十匁、右へ水二百合程入れ煎じ煮立ちたる所
へ長芋二三寸摺り込み段々に煎じ候えば泡の様なる灰汁浮上る。右を掬[すく]い取り段々に煮詰るに従い、少々ずつ水を入れる、度々泡様なる灰汁浮き上る。
右を度々掬ひ取り惣体水は七八合程入れ砂糖澄むまで灰汁を取るなり。右の密、糸の引く程に煮詰め候処へ、寒天一本に水五合程入れ煮溶し、
密の中へ濾し込み又た煮詰めやはり糸の引く程に相い成り候処にて茶碗に入れる。
灰[あく]汁取り法 砂糖一斤、
水二合程入れ煎じ亦長芋を二三寸程摺り込み段々煎じ、灰汁を掬[すく]ふなり、段々に煎じ詰るに従い、少しずつ水を入れあく取るなり、
惣体?に水は七、八合程入れ、砂糖澄むまであくを取るなり。