食菜録

下巻115

蒸し平目製法

原文
取り立ての蒸し平目を、塩にて半日ばかり押し水にてさっと洗い、尾の処を糸にて結び、竹にかけて天日にて三、四日干す。
(但し上々の天気なれば二日にてもよし、干し過ぐる時は風味悪し。)
水にさっと洗わず押したるまま干す時は、干魚の如く成って、つやもなく見所よろしからず、風味も悪し、又た塩にて押す前、庖丁にてよく、のろ〔どろっとしたもの、茨城弁か?〕を扱く〔取り除く〕べし。(但しよく水にて洗いのろを取つてもよし)
焼き立ての蒸し平目に、白酒を掛けて尤も美味なり、又生のは煮浸しにするも美味なり。

[主な食材]

ムシカレイ、醤油、
酒、味醂

備考:同種の調理法は他本には見当たらない。蒸し物は下拵えとして行われていたらしい。
『彰往考来』によれば、「ムシカレイ」をかつては「蒸し平目」と呼んでいたという。