下巻145
塩の製法
原文
一、先年長崎より、「ボウトル」(牛の乳〔オランダ語のboter、即ちバター〕の事)の桶を塩にて詰め来たり候事之れ有り候。右の塩、
氷砂糖の如く堅く相い成り居る故、その事を中浜万次郎へ尋ね候処、拵方[こしらえかた]左の如く、一間半或は三間位深さ、一尺程の箱、
地上より四尺斗高くいたし、右箱へ海水を汲み入れ、雨露ふせぐばかり取り離しなる様の屋根いたし、海岸へ数多く拵え置く、汐干[しおひ]
付けたる時取るなり、常の塩より荒く氷砂糖の細き品の如くなる様なり、何ケ月にて出来候か、覚え申さず候処、十月頃取り、
その跡へ又た海水汲み入れ候様相い覚え定めて一ヶ年にて取り候事に之れ有り候かと申す。土地、土数にもより申すべく候如何之れ有るべきか、
北アメリカ四十一度半位の地に候由なり、北アメリカにも常の焼きたる塩も之れ有るよし。
一、在国中我工風にて生塩を水にて溶き、硝石を寄るようにして試み候なり、口〈原文一字不明〉此位にあられの如くに堅まり、
又は●〈原文一字不明〉かくの如く屋根の如き塩出来るなり、又塩を焼き抜く時は陶器の如く相い成る物なり。
備考:食菜録特有か?