食菜録

下巻19

甘酒の方

原文
餅米上白 一升(但し、あらりと引〔挽き〕割り常の強飯の如くに蒸し申し候、尤[もっと]も冷やし申し候)
麹 一升 (上白米を麹にするなり。但し、粳米)
水 一升(但し、この内三分の一ほどを加えてよし。また酒五合、 水五合、合わせて一升にもするなり)
右の水の内へ糀をつけ、一夜置いてあくる日成程〔可能なかぎり〕 強く揉み候えば、よくよく花〔カビか?〕落ち申し候。
同じくは糀の米のはだにある黴[かび]まで落ち候ほど揉みてよし。さて糀の粕を濾[こ]して捨て、 その中へ強飯[こわめし]を仕込み申し候。この甘酒、寒の内に作りよく出来候時、鍋へ入れよく沸[わか]し壺へ入れ置き候得ば、 来年の夏までも持ち申し候、沸し候酒は堅く成り申し候故に、食べ申す時、水にて延べ燗[かん]をいたし候、 尤も当座々々に作りてもよし又常の甘酒よりは損ね申さず候。

備考:合類巻一では「醴酒方」。本文の表現に若干の違いあり。記述はないが、飲用する前に越す方が飲みやすくなる。
「原典現代語訳日本料理秘伝集成」第一巻(同朋舎,1985年) P.109によると
ありと・・・あらく
あくる日・・・翌日
壺へ入れ置き・・・壺に保存数する
当座々々・・・一回ずつ
損ね申さず・・・長持ちする